ひとくち健康講座
ピロリ菌の偶然と必然
2017年8月
セレンディピティという言葉を見掛けますが、日本では「幸福な偶然」という意味に近いのではないでしょうか。医学においても、偶然な出来事を見掛けます。1982年、ピロリ菌の培養は失敗が続いていましたが、研究者の1人が通常数日で終える培養を5日間続けたところ培地に細菌がいることに気付き、これが偶然にも菌の発見につながりました。そして、ピロリ菌を自ら飲むことでまず胃炎になることを証明したのです。
その後の研究で胃がんとの関連が明らかになり、2001年には10年の経過で感染者1246人に胃がんが36人発症するものの、非感染者280人では発症しなかったと日本から報告されました。
感染していれば胃がんにならないように早く治療すべきです。偶然見つかった菌ですが、治療には必然性があります。内視鏡などの検査を受けて、ピロリ菌を治療し、健やかに生活することで「幸福な偶然」は訪れると思います。