ひとくち健康講座

うつ病は紀元前から知られていた

2017年5月

 うつ病は古くから知られた病気です。紀元前5から4世紀に成立したといわれる「ヒポクラテス集成」では、哲学者アルクマイオンの体液説という理論を背景として、精神の症候論に大きな影響を与えました。例えば憂鬱を呈するメランコリアは、黒胆汁の過剰や移動によるものだと説明されました。この黒い胆汁の異常がメランコリアすなわちうつ病の原因とされていたのです。紀元1世紀頃に記載されたメランコリーの症状は、今日のうつ病の症候学とほとんど変わりないと言われています。
現在では、うつ病は憂鬱を主とするこころの病であるかと思われがちですが、実は脳を病の首座とし、実際は身体がだるい、しびれる、夜よく眠れないというような身体症状が多い病気でもあります。心当たりのある方は内科などの検査で異常が認められない場合、一度、精神科や心療内科を訪れてみることをお勧めします。

秋野病院  伊藤 正尚