ひとくち健康講座
PTSD(心的外傷後ストレス障害)の予防
2011年5月
長年PTSDの予防が研究されてきました。阪神大震災のころには、被害者にできるだけ災害の生々しい体験を語らせるという心理的デブリーフィング(psychological debriefing)と呼ばれる手法がとられていました。しかし、恐怖体験を思い出させて語らせるということは、その恐怖記憶をさらに強化してしまうのではないか、 トラウマ後反応をより意識させてしまい、トラウマ刺激に感作されやすくしてしまうのではないかなどと、効果に対する疑問が投げかけられました。実際の効果の検証でも有効性が確かめられず、かえって回復を遅らせかねないとの結果がでています。PTSDの予防に一番大事なものは、今居る場所での安全と安心感です。つらく怖い体験を無理に思い出させない方が良いのです。もう少しゆとりを持って振り返れるようになってから、親しい人に聞いてもらい、体験を共有してもらうことの方が、感情の整理、軽減になるようです。